特集記事中村佑介の一期一芸! 第一回 ゲスト:中田敦彦

第一回 ゲスト:中田敦彦

 

『一期一芸』は、イラストレーター・中村佑介が、様々なジャンルの業界で活躍する「一芸に秀でた方々」と対談していく連載コーナー。中村佑介ならではの視点で、その人の素顔や原点などにググッと迫っていきます…!

 初回は、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんが登場! 意外な初回ゲストですが、実は中田さんは中村さんの描く女の子のファンなのだそう。理想の女の子のお話から、モテない話…そして中田さんのお笑いへの想いまで、熱く語り合いました!

 

 

中田 僕、中村さんの描く女の子がすごく好きです。本当にきれいですよね。

 

中村 ありがとうございます! え、でも中田さんが好きなのは「綾波レイ」でしょ?

中田 いや、まぁそれはね(笑)。はい、綾波レイ大好きです。でも、中村さんの描く女の子にも、すごい魅力を感じますよ。ある種の理想像的な。という事は綾波レイと繋がる要素があるのかもしれない。僕、『四畳半神話大系』の明石さんが好きなんですけど、近しいものを感じますもん。

 

中村 それはたまに言われるし、分かる気がしますねー。でも中田さんの場合、実際の三次元の女性の好みはまた別ですよね? 実際に今ここに綾波レイがいたらちょっと引くでしょ?

中田 そりゃ、この現代日本にあの状態の子が急にいたら引きますよ(笑)。

 

中村 はじめての彼女とかは、ちょっと綾波っぽい感じあったりしました? 繊細で儚げで…みたいな。

中田 いえ、全然違いましたね、そういえば。というか僕、NSC(吉本興行の養成所)に入るまで、まともに女性と付き合った事がなくて、半分童貞みたいなもんだったんですよ。だから、しばらくはとにかく「女性と付き合いたい!」という欲望ばかりが先立ってまして…。そこで綾波という理想像が壊れる事はなかったとはいえ、それとこれとは別でしたね。

 

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中村 今の中田さんを見る限り、全然「モテない」というイメージはないんですけど、意外とモテなかった…?

中田 意外とどころじゃないですよ。まったくモテなかったです。ええ。

 

中村 あ、そういえば、中学生時代は丸メガネをしてイケてなかったっていうのはどこかで聞いたな…。

中田 「滝廉太郎」と呼ばれていた暗黒時代ですね。

 

中村 それそれ(笑)。文学少年だったから滝廉太郎に憧れてたとか?

中田 違いますよ! 僕が憧れてたのはジャン・レノです。レオンです!

 

中村 そっちかー、全然違うわ(笑)!

中田 レオンのナタリー・ポートマンが大好きで。だからレオンになるしかない、と思っちゃって…。あと、丸いメガネってかっこいい気がしたんですよ。でもね、あれはあの渋いジャン・レノがするからかっこいいんであって、くせ毛でセンター分けのイケてない中学生がしてたところでね…。しかも懐中時計持ってましたから。

 

中村 それはなんで(笑)?

中田 いやだから、かっこいいと思ったんですよ(笑)。絶対に懐中時計はかっこいいはずだと。なのになぜこんなにバカにされているんだろうか、と。

 

中村 その「かっこいい」って“モテ”と繋がっていたんですか? それとも、自分なりのかっこよさを追求していただけ?

中田 うーん、自分がかっこいいと思うものと“モテ”に、そんな距離があるなんて分かってなかったんでしょうね…。

 

中村 振る舞いとかにも、自分なりのかっこよさ、みたいなものは意識してました?

中田 あまり喋らないのがかっこいいと思ってました(笑)。

  

中村 そういう人がよくお笑いにいこうと思いましたね!?

中田 高校二年の時に転機があったんです。同じ高校にめちゃくちゃ可愛い子がいる、という事に気づいて。もうルノワールの絵から飛び出てきちゃったのか、っていうくらい可愛かった。そして、その子と同じクラスになるんです。

 

中村 ちなみに、中田さんのその時の学校内のポジションはどんな感じだったんですか?

中田 まぁ、最下層ですよ。いないものとして扱われる「インビジブル」層です。

 

中村 インビジブル(笑)。そんな男子が、ルノワールの絵のような美人女子を好きになってしまったわけですね…!

中田 そう。それで、どうにかかっこよくなりたいと思って、髪を切って茶髪にして、メガネをコンタクトに変えたんです。

 

中村 うおー、すごい!

中田 しかも、一日で変えたんですよ。夏休み明けとかじゃなく普通の平日に(笑)。その日、学校行くまでの緊張感はすごかった! ウロウロしまくって、道曲がるごとにカーブミラーで自分の姿を確認して「これ正解か!?」って。

 

中村 聞いてるだけで緊張しますよ(笑)!

中田 で、いよいよ学校について教室に入ったら…。

 

中村 入ったら!?

中田 みんな大爆笑。そりゃそうですよね…。あまりにも唐突に変わりすぎたもんだから、「お前だれだよ!?」みたいな(笑)。そして僕は、顔を真っ赤にしてうつむきながら席についたわけです。

 

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中村 ああぁ…。何か反応しなかったんですか?

中田 残念ながら、そこで反応できるだけのキャパはありませんでした。でも、その子には高校二年の終わりに突然の告白をしました。ま、あっさり振られるんですけどね。そこからはもう、逆恨みですよ。

 

中村 じわじわとアプローチをしていったわけでもなかったんですね。

中田 いえ、全く。一度、席が隣になったんですけど、話しかけるどころか呼吸すらままならない状態になりまして。なんか、「呼吸音を聞かれるのすら恥ずかしい」みたいな意味の分からない窮地に陥って、ただただその二ヶ月を死なないように耐え抜きました。

 

中村 こわいわ(笑)。

中田 それでもう思い詰めちゃって、最後に通り魔的に告白したんです。

 

中村 で、振られて逆恨みか。

中田 はい。心の中で「ふざけるな…!」と。でも、そこらへんから自分があまりにも喋れないという事に気づいて、テレビとかを見てトークを勉強してみようという気になりました。それで、メモを取ったりしながらお笑い番組を見るようになって、ハマっちゃったんです。中学時代からそれまで、お笑いやバラエティをほぼ全く見ていなかったので、免疫がなさすぎて何見てもゲラゲラ笑っちゃって。もう面白くてしょうがなかった。しまいにテレビじゃ物足りなくなって、お笑いのビデオを借りて見まくるようになりました。

 

中村 へぇ! そこから芸人への道が始まっていたわけですか。面白いなぁ。

中田 とは言っても、大学入って普通に就職を目指そうとしていましたけどね。でも、教授から言われたんです。これからの日本においては、「普通に仕事をして安定して」という考え自体が甘いと。あと、バイトの先輩たちが次々と就職に失敗していくのを見ていたら、なんだか絶望的な気持ちになっちゃって。そういうのもあって、それならもういっそチャレンジしようかな、と考えたんです。というのが外側の理由で、内側の理由はまぁ「モテたかった」という。

 

中村 やっぱりそこか(笑)。

中田 いや僕ね、大学デビューするつもりがまた結局失敗して、全然彼女とか出来なかったんですよ。合コンも一応行ってはみたものの、周りと圧倒的な力量差があるわけです。僕は、女子と何を話せば良いのか全く分からないというレベルで…。もうそういう自分が本当に嫌で、変わりたいと思いました。で、ちょうどその時期に相方の藤森に誘われたので、NSCに入ってみようと決心したんです。

 

中村 芸人になると決めた時、両親はどう反応しました?

中田 親父は反対していましたね。ずっと勉強ばかりしてきたヤツが、急に一時期からお笑いばかり見るようになって、もうその時点であやしいと思ったんでしょうね。高校三年の時、親父が急に部屋に入ってきて「お笑い芸人になろうとか思ってないよな?」って聞かれたんです。で、僕はしれっと「まさか。弁護士になりたい」とか答えたんですけど(笑)。そこからずっとごまかし続けて、実はNSCに行きはじめてからも、親父には隠してたんです。でも、だんだん「就職活動は?」とか、本格的に将来の事を気にしはじめて。で、ある時そこで母親がポロッと「敦彦には敦彦の考えてる事がある」みたいな事を言ったんです。そしたらもう「何だ、話してみろ、説明してみろ」となって…。もうそこで、これはごまかし切れないなと腹をくくりました。で、「ちょっと待ってて」と言って部屋で手紙を書いたんです。親父が言いそうな反論をあらかじめ想定して、それに答えるような内容の文面を。それを親父も真剣に読んでくれたんですが、ずっと「うーん…でもなぁ…でもなぁ…」って(笑)。結局、納得したような言葉は言わなかったし、そこからあまりその事に触れなくなりましたね。でも、そうこうしているうちに僕はすぐデビューする事になって、あれよあれよという間に大変な感じになっちゃった。僕自身がいっぱいいっぱいだし、親父も「なんかもうテレビすごい出てるけど大丈夫か!?」みたいになっていて(笑)。要するに、親父は反対するというよりずっと心配してくれていたんですよね。今ではすごく応援してくれてます。

 

中村 そうかー。良いお父さんだなぁ。納得できていなくても、頭ごなしに「ダメだ。やめろ!」とは言わなかったんですもんね。今言っていたように、あれよあれよという間に“武勇伝”で大ブレイクして、でも、その後ちょっと大変な時期があったんじゃないですか?

中田 そうですね、世間的には一時消えてたと思われてますよね(笑)。一応仕事はあったんですが、仕事の規模がどんどん小さくなって、人目につかない感じになってましたからねぇ。やっぱり、改造しなくてはと思いました。いろいろ先輩から話を聞いたり、ネタの考え方を変えようと試したり…。僕、正直言うとネタコンプレックスだったんですよ。というか、いまだにそうですね、たぶん。

 

中村 ネタコンプレックス…。ネタを作るのに苦手意識がある、という事ですか?

中田 はい。ネタの作り方って、変な話、毎回忘れちゃうんですよ僕(笑)。毎回毎回、「ネタってどうやって作るんだっけ?」というところから始めて、かなり四苦八苦して形にしていく。苦手意識はバリバリありますね。僕たちは、ネタをしっかり見せるという機会を持つ期間が極端に短かったんです。“武勇伝”でドカンときてから、そのまま、ネタ見せではないバラエティの仕事ばかりがどんどん増えていった。だから、着実にネタを作り続けてきている人たちと、圧倒的な開きを感じるというか…。何かの賞を取ったわけでもないし、「なんとかギリギリ、テレビに出られている」というような感じがずっとあって。だから、コンプレックスなんですよ。そこをこれから、どうにか逃げずに克服したいなと思っているんですけどね。

 

中村 じゃあ逆に、今いちばん気持ち良くやれている仕事って何ですか? バラエティ?

中田 うーん、コンプレックスとかを持たずにすんなりやれているのは、トークライブですね。僕らはデビューしてから一年間、毎日欠かさずにライブをやる、という事をしていて、それが無くなってからも毎月トークライブはやっていました。あまり、新人でデビューしたてからトークライブをする人っていないので、場数という意味でも同じ年代の中ではちょっとアドバンテージがあるかも。だから、自信を持って楽しくやれています。でも、お笑い芸人にとってやっぱりハクがつくのはネタですよね…。バラエティでも面白くてトークライブもいけて、ネタも評価されている芸人さんには、もう本当に憧れます。

 

中村 中田さん、シティボーイズ好きなんですよね?

中田 大好きです! あの方達の笑いの取り方って、すごく心地良いなと思う。憧れますねー。デビューする前は、ああいうところを目指したいなって思ってました。だから実際デビューした時、「あ、これまったく違う感じで出ちゃったな…」ってなりましたよ(笑)。

 

中村 たしかにね(笑)。でも、“武勇伝”の時と今とでも、全然違いますよ。

中田 そうですね。良い感じになってきてたらいいな、と思います。

 

中村 それに、まだ先が長いから、またガラっと変わったりする事があるかもしれないですよね。急に悟りを開くような(笑)。

中田 開きたいなー、悟り(笑)。まぁなんにせよ、僕らはまだまだ若いなと思います。若いというか、青いなと。先輩方の話を聞いていると、言葉の重みも全然違うし、学ぶ事ばかりです…。

 

中村 やー、芸人さんってかっこいいなぁ。芸人としてテレビに出るというのは、とても過酷な事だと思うんです。ネタを準備してそれを間違えないようにやる、というだけじゃないでしょ。バラエティに出ていたら瞬発力が大事だろうし、ほんのちょっとした発言などで、見ている人に「この人好き」とか「この人嫌い」とか判断されたりする。そもそも瞬発力なんて、なんというか…丸出しじゃないですか。その人自身が。そうやって人間力みたいな部分で勝負している「芸人さん」という存在は、本当かっこいいと思います。

中田 いやいや、恐縮です…。まだまだこれからなので、頑張らないとですね。

 

中村 これからのご活躍も楽しみにしています!!

 

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