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映画「全員、片想い」『MY NICKNAME is BUTATCHI』飯塚 健・伊藤沙莉インタビュー

『全員片思い』『MY NICKNAME is BUTATCHI』飯塚健・伊藤沙莉インタビュー

この夏公開のオムニバス映画「全員、片想い」の中から、『MY NICKNAME is BUTATCHI』を特集紹介。幼なじみだった少年少女が成長し、芽生えていった自分の恋心に思い悩む様子を描く青春物語だ。
ヒロインのノムラ役は『TRANSIT GIRLS』「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」で話題の伊藤沙莉。思いを寄せられる男子サタケを演じるのは『監獄学園』や『南くんの恋人』で主演を務めた中川大志。監督・脚本は『大人ドロップ』『荒川アンダー ザ ブリッジ 』『REPLAY&DESTROY』などで生きた青春の感情を活写してきた飯塚健。言葉が躍動するようにポンポンと連なっていく会話劇の楽しさに加え、じっと思いを噛みしめて沁みるシーンの感動も味わえる名編となった。
今回は主演の伊藤沙莉と監督の飯塚健にお話を聞いて、過去作のエピソードも交えつつ、メインで組んだ本作の魅力をお届けする。

 

飯塚健・伊藤沙莉インタビュー

──今回の映画『全員片思い』の一編である『MY NICKNAME is BUTATCHI』(以下、『BUTATCHI』と略記)は原作がありますが、映画は独自の物語展開をされていますね。
飯塚 そうですね。オファーを頂いたのが、『REPLAY&DESTROY』(以下、『REPLAY』と略記)の撮影中だったので、沙莉にも原作をちょっと読んでもらったりしていろいろ考えていました。原作だと「太っている女のコが20㎏痩せる」という描写が必要になるんですよね。それはちょっと短編には向かないかも、という話を製作陣にしたんです。そしたら内容を変えて進められる形となり、アイディアを出しました。「沙莉でやれるなら」という条件も付けさせてもらって。
──ということは、新しい脚本では伊藤沙莉さんを当て書きにしたんですか?
飯塚 「こういうことをやってくれたら面白いだろう」ということは何となく。大志(中川大志)もそうなんですけど。
──沙莉さんはどの段階で脚本を見たんですか?
伊藤 オリジナルは書いてすぐに見せてくださいました。飯塚さんの世界観がプラスされたことで、私は一ファンとしてすごく面白いと思ったし、自分が演じさせていただくことを分かった上で読むと、愛がたくさんあるなと思って素敵な脚本だと感じました。
──脚本の段階で感じる「飯塚健らしさ」とはどういうところですか?
伊藤 会話劇というところや、言い回しや口調もそうですね。それに、読んでいてこれは飯塚さんしか演出できない脚本だな、と感じるんです。この世界観は誰にも真似できない特別なものだと思います。

『MY NICKNAME is BUTATCHI』より──飯塚さんの描く女の子像についてはいかがですか?
伊藤 答えになっているか分からないですが、今回の作品は、私が今まで飯塚さんの作品で演じてきた女の子像とは違う感じだったので、新しいものを与えてくださったな、と思いました。中川君と話している言葉のやりとりもいつもとは違っていて。でも、テンポが大事だったりするところは同じで、見ただけで「早くこのセリフが言いたい」と感じましたね。
──飯塚さんが企画段階から伊藤沙莉さんと組みたいと思われたのはどうしてですか?
飯塚 沙莉とは初めましてがドラマの『GTO』(二〇一四年)でした。あの時は、自分以外の方が書かれた脚本を監督するも初めてのことだったし、ゴールデンならではの制約もバカバカしいくらいあったんですが、自分でアレンジするところもあるじゃないですか。特にセリフとか。もともと沙莉の役は一話につき二言とかで、記号みたいなキャラクターだったんですね。面白味のない、誰も演じたがらないような。そこは変えたいと思いましたし、やりとりをするなかで、「こういう風に反応してくれるんだ」ということも分かったので、どんどん足していったんです。沙莉をクラスの最前線に押し上げちゃおう、と僕は勝手に思っていました(笑)。
伊藤 本当にありがたいです(笑)。
飯塚 その時に、「『REPLAY』というのをやるから」という話もしていて。で、そっち方面は、結構やってきたキャラクターになったし、「もう他のところでもこすられ始めているよね」と言って、今回の映画は違う感じの役にしようと進めていきました。相手がスクリーンだったし、タイミング的にもちょうど良いな、と。
──『GTO』をやっていて、沙莉さんに魅力を感じたのですね。
飯塚 今でもたまに言うんですけど、あの時は俳優全員にワークショップみたいなことをやらせてもらったんですよ。クラスでなにかが起こると、セリフがなくても、お芝居は常にあるわけじゃないですか。そこをちゃんとやろうと思って、ワークショップの時間を設けさせてもらいました。その時に僕が「芝居として見られたのは松岡(茉優)くらいだ」と言ったのが、沙莉はすごくカチンときたらしいんです。「クソッタレ!」と思ったそうで(笑)。負けず嫌いなところがあったんでしょうね。あと、沙莉のマネージャーさんからも、「根性はすごくあるので、どれだけぶったたいて頂いても大丈夫なんで」と言ってもらって。そんなこと言ってくれる事務所、なかなかないじゃないですか。ありがたいな、と思っていろいろやってみたら、セッションできたので「これは良いところに行く気がする」と思ったんです。
──沙莉さんはその時のことを覚えていますか?
伊藤 いやもう、よーく覚えています。めちゃくちゃ覚えています。ピリピリしていて、空気自体がすごくて。私はその日が飯塚さんと初対面だったんで、「あ、飯塚健さんだ!」と思っていたら、直後に爆弾がたくさん落ちてきました。結構、お芝居が初めての子とか、元々モデルとか歌手とか、私と同じように普通にお芝居をやって来た子とか、いろんな子たちがみんなごちゃ混ぜになった現場だったんです。しかも茉優は親友だし。私は確実に彼女は素敵だなと思うんですけど、それとこれとは話が別で、「ヤバい!」と思ったんです。埋もれたくないし、飯塚さんに認めてもらいたいと思っていて。そこで何もできなかったら、この三ヶ月間どうなるんだろう、という不安もありました。そんな中で、飯塚さんがさっきの言葉をバッ! と言われたから、ショックと共に、「ええっ!」となって。でもリハーサルを重ねるうちにいろいろ引き出して頂いて、そこからは「良かった〜」と思いました。私、完全に嫌われていると思っていたので。
飯塚 嫌ってないよ(笑)。
伊藤 嫌っているというか、「好きな芝居じゃない」と思われているかな、と。どこかで振り向かせたい、と思っていました。
飯塚 一応フォローすると、松岡は彼女が一五歳くらいの時にワークショップで見ていて、初めてじゃなかったので、たぶん俺が発する空気を知っていたんですよね。
伊藤 あ! これだけ聞くと、私「負けず嫌いのヤバい奴」みたいになっているけど、そんなんじゃないですよ!
飯塚 本当は『おこだわり』みたいな奴だもんね。
伊藤 そうです、そうです…って、いやいやいや! 『おこだわり』はぜんぜん違う!逆、逆! どちらかというと、『おこだわり』では私が茉優のキャラクターの方ですよ。ちゃんとしている方(笑)! あまり自分の意見を言えない方だし。あれは架空の人物ですけど。『GTO』の時は、自分自身に対してムカついていたんです。でも飯塚さんはちゃんと、その奥の奥を見てくださっていて。三ヶ月の間にいろいろなことができました。(※『おこだわり』とは、テレビ東京で放映されている『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』というフェイクドキュメンタリーのこと)
飯塚 面白かったですよ。結局、みんなが沙莉に頼るようになったんだよね(笑)。「困ったなー」と思ったら、「沙莉にしゃべらせておけば良い」みたいな。今回の作品『BUTATCHI』は、これまで一緒にやってきたこともありながら、新しい扉を叩ければな、ということで作っていきました。
──『BUTATCHI』で印象的だったのは、主人公の二人が昔の話をよくする一方で、「数学ついて行けている?」「進路はどうするの?」とか、サタケが将来の話題を振ると、ノムラ(ブタっち)は「決めていない」とか「明日決める」とか消極的なんですよね。
飯塚 幼少期の描写と、逆転構造になっていますよね。昔は強かったはずのノムラが今は弱くて、弱かったはずのサタケが今は成長していて。屋上で、友人のカンザキが「ぶっちゃけ、私はあなた以外はどうでも良い」という話をするじゃないですか。そういうことも含めて、ノムラが見ているのは「二人の背中」なんでしょうね。必死に追い掛けようとしているというか。だから、結構ぐちゃぐちゃしてる子なんだとは思います。バス停の草むらにベタっとなっているのは、そういうことだと思いますし。
──親友のカンザキが出てくるのも、原作とは違う感じで印象的でした。屋上のシーンは良かったですね。寝転がってずっとワンカットで喋っていて。

『MY NICKNAME is BUTATCHI』より飯塚 あれは、割らずにいきたくなったんですよね。二人の距離感というか。体勢が変わるところででカットをつないでいますけど、さっきの「背中」と一緒かもしれません。二人の体勢と身体の距離間で関係値が分かるという。
──映画だと長回しが多いから、テレビとは見え方も違ってきますね。
伊藤 気持ちが途切れない分、感情がもろにリアルに出るというか。長回しの方が、私たち的にはやりやすいというか、ありがたいな、と思います。
飯塚 作品が違っても、撮り方は変わらないよね。
伊藤 だいたい長回しですね。だから、あとで見て知る(笑)。
飯塚 『REPLAY』も、部屋の中のシーンでも基本アタマからケツまで全部行きますね。それを三回線くらいやって、編集で割って見せているだけです。
──なるほど。その『REPLAY』や『放課後グルーヴ』などもそうですが、女性像についても聞かせてください。飯塚さんの作品に出てくる女性は結構強めで、男の子は情けない感じですよね? 青春物語だと、女性が見てカッコ良いと思う男の子や、男性から見て憧れる女の子が入ってくる作品も多いですが、あまりそういうことはなく…。
飯塚 そうですね(笑)。基本、精神構造的に女の子の方が年上だと思っているので。十歳くらいの差だったら、女の子の方が上だと思うんですよね。同じクラスにいたら、確実に女の子の方が達観していると思いますし。そういう意味では、今回の『BUTATCHI』は関係性として珍しい方だと思います。女の子の方がこじらせている感じがある。あとは、「生っぽくしたい」というのが常にあるかもしれません。高三だからって、いつも受験のことばかり考えているわけではないですよね。実際はもっとバカだと思いますし。
──お話を作る時に外しそうなノイズをむしろ入れていっている、ということでしょうか。
飯塚 まさにそうだと思います。会話を逸らしたいんですよね。核心だけ並べちゃうと、二時間ドラマみたいだな、と思っちゃうんで。急に言われるからハッとすると思うんです。実際にそうじゃないですか。例えば、「今日この人に告白しよう!」と思って食事に誘って、「いっせーのドン!」では絶対言わないじゃないですか。「今日はちょっとやめておいた方が良いんじゃないか?」ということも考えながら、様子を伺いますよね。それを探るために、関係ない話題を投下したりもするじゃないですか。それが本当の「ナマ」だと思うんですけど、作り物の世界になると、「これ、要る?」という声も出るわけですよ。幸い僕の周りにはあまりないですけど。ピッチングと一緒です。「ボール球を使わないと、ストレートが速く見えないよ」ということですよね。

『MY NICKNAME is BUTATCHI』より──核心以外のところで、いろんな人が動いて面白いという意味では、『GTO』の伊藤沙莉さんは魅力的でした。「クラスのお調子者」という役どころも結構ありますよね。
伊藤 多かったですね。
──余談ですが、伊藤沙莉さんが「押すな、押すな」と言いつつ前に出てくる動きが大好きなのですが、何回かされているなか、『GTO』の写真を撮るシーンで最初にやっていますよね? どうやって生まれたんですか?
飯塚 俺は「押されてもいないのに押されている感じ」くらいしか言っていなかったんですよ。それを体現したら、ああなった、という(笑)。
伊藤 そうですね(笑)。飯塚さんは言ってすぐに「それをやってみると?」という感じだから、「どうしよう?」と考える時間はないんですよ。もう「うわあっ!」とやったら、それが買われたんで(笑)。
──そして『REPLAY&DESTROY』でも出てきたわけですね。二話のトイレに行くあたりとかで。
伊藤 あれは台本になかったんですよ。現場で飯塚さんが「押すな、をやっちゃいなよ」という感じで(笑)。
飯塚 「ここ、行けるな」と。「行けるな」というか、本来は要らないんですけど(笑)。あれが「無駄」って奴ですね。
──そういうのを入れたくなる時に、沙莉さんがやってくれる、というわけですね。
飯塚 話が早くて助かります(笑)。
伊藤 その言葉が聞きたくて、私はがんばっています。現場で「話が早くて助かる」と言ってもらえると、その一日は「大丈夫だ」と。
飯塚 そしてそれを周りが嫉妬しているという(笑)。
──『BUTATCHI』の屋上での会話で、沙莉さんと上原実矩さんが、「その声を聞けなくなるのは嫌なんだよ」「こんなだみ声でも?」「最高だよ」というやりとりをしますよね。飯塚さんの作品は会話の掛け合いがとても気持ちが良いです。『REPLAY&DESTROY』ではテンションの高い掛け合いで大変そうでした。
伊藤 「失敗したら終わる! 噛んだら殺される!」と思ってやっているので(笑)。自分が足を引っ張れない! というのもありますし。『GTO』も『REPLAY』も女子高生役でしたけど、空き時間に休んでいることがあまりなくて、ずっと掛け合いをしていました。
飯塚 勝手にはじまるよね。誰かが言い出して、延々に本読みをやっている状態になる。『REPLAY』だと、孝之(山田)が常にぶつぶつやっていたし。
──誰かのテンションが落ちたら、もう崩壊してしまうような危険性がありますね。
伊藤 そんなのはすぐにバレます。飯塚さんには、ちょっとした緩みも隠し通せないです。大人の役者さんでも結構緊張していると思います。
飯塚 ベテランの人ほど、そうかもですね。「怒られに来た」なんて言ってくれる人もいるくらいなんで。実際NGよく出すし(笑)。あと、僕の演出は動きが多いことに加え、現場でセリフを足したり引いたりするのも日常茶飯事なので、必然的にただの暗記ショーにはならないんです。
──アドリブはほとんどないんですか?
伊藤 だいたい決まっていますね。飯塚さんの作品でアドリブを言ったことはあまりないです。「こういう感じのことを言ってみて」と言われてやったことはありますけど、自分で考えるのは面白いかどうかが分からないですし。世界観を崩したら怖いから言えないですよ、なかなか。言う人は言いますけどね、山田さんとか(笑)。
飯塚 「ここのノリシロをお願い」というやりとりがあって、ちょっと考えてきてもらったりはあります。彼は「これはとっておき」的な隠し玉をぶっ込んでくるんですよ(笑)。でも僕の脚本をやってくれる俳優はすごいと思います。大変だろうな、と自分でも思いますから。俺、絶対やれない。
──そういえば、沙莉さんはデビューがすごくて、ドラマ『14ヶ月』(二〇〇三年)を見た人たちがみんな「ナツキ役の伊藤沙莉って、初めて見たけど誰だ!?」「ものすごい人がいる!」と、あのドラマを語る人はみんな言ってましたね。
伊藤 そうなんですか? 三五歳の役だったんです。
──子供になってしまった研究者ですよね。すごく自然で。あれが初演技だったんですよね? 周りから騒がれていることを感じていましたか?
伊藤 まったく! 今は、エゴサーチしかしていないくらいしていますけど(笑)。あの時は何も分からないまま行ったし、お芝居もよく分かっていない状態でした。九歳だったので(笑)。あんまり覚えていないんですよね。
飯塚 やっぱり才能ですか?
伊藤 いやいや、そんなわけないですけど(笑)! 逆に何も考えていなかったからかもしれないですね。あ! こう言うと「才能」みたいになっちゃいますけど(笑)、そういうのではなく。感情どうこうではなかったかもしれない。逆に今はできないです。
──沙莉さんはあの頃は歌手志望でしたよね?
伊藤 そうでした。『14ヶ月』をやるちょっと前までですけど。『14ヶ月』でドラマの現場に行ってから、お芝居をやりたいなと思いました。一回やっただけで、なめたことを言っていますけど(笑)。むちゃくちゃ面白かったですね。「何これ?」と思いました。だから、今でも「この仕事でお金をもらっている」感覚があまり分からないんですよ。子供のまま来ているので。お金の話をされても、イマイチよく分からない。「お金をもらえるんだ、ラッキー!」くらいの感覚なんですよ。
飯塚 そんなわけなくない(笑)?
伊藤 完全にないわけじゃないですよ。でもあまり分からないんですよ。
──興味深い話ですね。では『BUTATCHI』の話に戻ります。最後に風力発電の風車が出てきますね。『彩恋』にも出てきたので印象的です。なにか思い入れがあるのかと思いました。
飯塚 銚子のやつですね。『彩恋』も近い場所で撮っています。いや、久しぶりに銚子で撮ろうと思ったんです。『BUTATCHI』は「鬼ごっこにかこつけて抱きしめる」というところから物語を作っているので、必ずあそこで撮ろうと最初から決めていました。昨今、グレードという意味で、何でもかんでもドローンを飛ばす風潮があるけど、しょせん「空撮」なので、然るべきシーンで使わなければ何の意味もない。やっぱり大事なのは芝居ですから。今回、僕は初めてドローンを使ったんですけど、「然るべき使い方をしよう!」と思っていたら(笑)、『彩恋』のことを思い出しました。あの場所だったら、飛ばし甲斐がありそうだと思って。二人には、本当にすごく走ってもらいました。ゲロ吐くんじゃないか、というくらい(笑)。
伊藤 ちょっと出たんじゃないかな、というくらい(笑)。
飯塚 僕らは本当に遠くにいまして。何せ、空撮なんで。
伊藤 そう! 「カット」が聞こえないんですよ。いつまでも走り続けました。
──お話としては、ノムラ(ブタっち)がサタケを捕まえて、その後また走ったので、サタケが逃げたノムラを捕まえるのかな? どうなのかな? と思ったりもしました…。
伊藤 私的には逃げたというより、最後の「吹っ切れるチャンス」かなぁと…。どちらかというと、「サタケに追いかけてもらいたい」というよりかは、「ありがと」という感じなのかな、と思ってやっていました。バスから降りて「落ち着け、落ち着け」とやっているシーンも、「今日じゃないとズルズル引きずっちゃうから、今日しかない!」と思ったからだと思うんですよね。
飯塚 抱きしめた方としても、思わず抱きついちゃったということがあると思うんです。ノムラ的には、昔みたいなことにして吹っ切ろう、みたいな。
──鬼ごっこを選んだというのは、ノムラさんっぽい感じがします。大人っぽい別れ方よりは子供っぽい感じで。
伊藤 サタケとノムラだからこそ、という。
──良いシーンでした。今回はじっくりお話が聞けて良かったです。長編も見たいと思いました。
飯塚伊藤 そう言われると、嬉しいですね。

『MY NICKNAME is BUTATCHI』より──沙莉さんは、『トランジットガールズ』ではガールズラブの物語を演じていましたが、今後「こういう役をやりたい」というのはありますか?
伊藤 何だろうな…。あんまりミステリアスな役はやったことがないから気になりますね。だいたいおちゃらけているか、人をいじめているかなので。ミステリアスというのは、まだイメージ的にないと思うんですけど、今後できるように自分がなれればな、と思います。もちろんコメディは好きなので、面白いこともいっぱいやりたいと思います。
──「これでいじめっ子のイメージがついたのかな?」と思う作品はありますか?
伊藤 『女王の教室』ですね。あれから、いじめっ子役が途絶えないので。本当に「何人いじめてきたんだ?」という話なので(笑)。そうやって嫌な奴をやったりすることがある中で、ブタっちみたいな真っ直ぐな女の子を演じると、役に対して生まれる愛情も大きいから、やっていて幸せだな、と思います。
──そういえば『14ヶ月』はミステリアスな役でした。
伊藤 そうですね。あれ以来ないですね。本当に、デビュー作で「ミステリアス卒業!」みたいになっちゃって(笑)。
──まさかの九歳で卒業…(笑)。そして飯塚さんの次回作も楽しみにしています。渋川清彦さん主演の『榎田貿易堂(仮)』の告知が出ていました。
飯塚 「貿易堂」とか言っているんですけど、要は何でもアリの廃品回収とか遺品整理とかの雑貨屋兼リサイクルショップみたいな…まあ、すっとぼけた話です。
──なるほど。今後はこういう方向に興味があるというものはありますか?
飯塚 この前、『ランドリー茅ヶ崎』というドラマをやったんですけど、あれでは滝藤さんと松井の二人には変化は起こしていないんです、主人公なのに。そういう方が僕は難しいと思っています。「普通の役」というんでしょうか。変化が描かれていれば、誰だって変化できるんですよね。それこそ沙莉のいじめっ子がいじめっ子をやめるとか。そこには理由が絶対に描かれるでしょうし。でも普通に生きていることだけで充分大変だし、そういう人こそ最もいっぱいいると思うんですね。毎日決められた時間に出勤して、嫌なことがありながらもがんばる。自由に使えるお金も少ないけど明日もがんばる! みたいな。当然その繰り返しを描いただけではドラマにはなりづらいと思うんですけど、何か物語に取り込めないかな、と思っています。どんどん足しちゃうのは簡単なので。「人を殺したことがある」とか書いちゃうと、特殊すぎるから誰でも書けるし…と思っちゃう。今は「何てことないなかで生まれる何か」というものに気持ちが向いているかもしれないですね。
──自然ななかで起こっていくこと…。興味深いですね。お二人の作品、今後もぜひいろいろ拝見していきたいです。
飯塚 うちらも、きっとまた何かやりますよね。
伊藤 そうですね。やりたいですね。
──本当に楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 

 

映画公開情報

映画『全員、片想い』

映画「全員、片想い」『MY NICKNAME is BUTATCHI』は、7月2日(土)より全国ロードショー!

「全員、片想い」『MY NICKNAME is BUTATCHI』
キャスト:伊藤沙莉、中川大志、上原実矩
監督・脚本・編集:飯塚 健
原案:あんにゃ「私のあだ名はブタっち。」(E★エブリスタ)
製作:エクセレントフィルムズ/東映/木下グループ/東映ビデオ/パルコ/エブリスタ
配給:東映
http://zenin-kataomoi.com/

「片想い」がテーマとなる短編作品を集めたオムニバス映画「全員、片想い」。豪華俳優陣14名のキャストが、8つからなるそれぞれのストーリーを演じる。女子高生から老婦人までそのヒロイン像も様々で、切なく心に響く物語が展開される作品だ。その中の一篇『MY NICKNAME is BUTATCHI』は、小説投稿サイト『E★エブリスタ』の電子小説を映画化したもの。幼い頃、気弱だったサタケ(中川大志)を助けるため、よく喧嘩してカサブタを作っていたノムラ(伊藤沙莉)。サタケはカサブタだらけのノムラに「ブタっち」というあだ名を付けていた。やがて二人は成長し、ノムラはサタケに恋心を持つようになっていく。進路も決めなければいけない高3の大切な時期、心のもやもやを抱えるノムラはどう動くのか…。


プロフィール

飯塚健さん・伊藤沙莉さんプロフィール写真

飯塚健(いいづか・けん)
自ら資金集めに奔走し、22歳でオリジナル脚本・監督の映画『Summer Nude』(2003年公開)を撮影して話題になる。その後も『放郷物語 THROWS OUT MY HOMETOWN』『彩恋 SAI-REN』と、オリジナル作品の脚本・監督作を発表し、『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『風俗行ったら人生変わったwww』『大人ドロップ』などの話題作でも監督・脚本を務める。舞台や小説、MVなどでも活躍し、ドラマ作品には『放課後グルーヴ』『REPLAY&DESTROY』『神奈川県厚木市 ランドリー茅ヶ崎』などがある。

伊藤沙莉(いとう・さいり)
9歳の時に「14か月~妻が子供に還っていく~」(03:NTV)でデビュー。以降、定評ある演技で注目を集め、現在は若手女優として映像作品に多数出演。主な作品に「GTO」(14:CX)、「REPLAY&DESTROY」(15:TBS)、「TRANSIT GIRLS」(15:CX)、「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」(16:TX)がある。映画出演作に「兎のダンス」(07)、「悪の教典」(12)、「幕が上がる」(15)など。「全員、片想い」の『MY NICKNAME is BUTATCHI』(16)が7/2より全国ロードショー。今後、映画「獣道」(17年公開)が控えている。

映画『全員、片想い』予告

映画『全員、片想い』『MY NICKNAME is BUTATCHI』メイキング