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StarS ILLUST Gallery出張版【わかさんインタビュー】

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わかさんは青を美しく遣い、静かな情景や感情が溢れる刺激的な作品を水彩やアクリルで描いています。それだけでなく不思議な生物やカラフルで楽しい絵も描かれます。元々はスモールエスに投稿し、メイキングイラストなども担当されたわかさんが、季刊エスに投稿しようと思った経緯には、心境の変化がありました。これまでの作品を振り返りながら、色やモチーフの変化についても伺っていきます。
※季刊エス54号に掲載したインタビューに入りきれなかった部分を加筆し、作品展数を増やした内容で紹介いたします。


わか インタビュー

──わかさんは元々、SS(スモールエス/季刊Sの妹雑誌)に投稿していましたね。

わか SSは絵が大きく載る印象で、エスは講評のような少し敷居の高い印象でした。あと、仕事をしたい人向きという解釈をしていた為、SSの方が投稿しやすいかな~と送りました。そのあと、いったんSSへの投稿をやめて、趣味で描いていこうかと思っていたのですが、久しぶりにエスを見てみて、ちょっと講評をもらってみたい気もする…と思いはじめて。

──なぜそう思われたのでしょう?

わか SNSで色んな人の書籍やCDジャケットなど絵の仕事を見かけて、絵の仕事に興味を持つようになりました。今まで、絵の仕事はできないと考えていましたが、思い切って視野に入れることを考えるようになって。また、今の絵を客観的に見てもらう機会がほしいなと感じるようになりました。あと、投稿すると同時に、雑誌だと色んな方に見てもらえるなと思いました。去年はじめて個展をしたことで気持ちに変化もありました。それまでは、自分の好きなように描いて、少しずつ作品を見てくださる方が増えて、嬉しいし、満足していたんです。個展後、次に自分がやりたいことって何だろう?と考えたときに、もう少し作品の幅を広げたいと考えるようになりました。

──個展が転機になったんですね。それでは作品づくりについても教えてください。まず、どんなきっかけで絵を描くのでしょう?

わか 私の場合は咀嚼するより、思いついたら描く方が多い気がします。仕事が忙しくなったりするとその反動でデロッと絵ができたり(笑)。家で考えると描けないので、出勤時や休日に散歩するときに思いつくこともあります。

──例えば「隣の芝生は青い」という作品はいかがですか?

「隣の芝生は青い」(2015)
「隣の芝生は青い」(2015)

わか この絵は珍しくタイトルを先に思いつきました。他人を羨ましく思う事が度々あった為、それを絵にしようと思って。「比べる」「計測する」というモチーフやニコニコしたデフォルメ人物を置いて、周りの人は幸せそうに見えるけど、自分はどうかな?という自問も。暗いですけど(笑)。他にタイトルから決めた作品は、「ESCAPE」です。忙しいときに色んなことから逃げたいなと考えていて、思い切って逃げている絵を描いてしまおうと思ったんです。タイトルは描いたあとに考えることの方が多いですね。

「ESCAPE」(2014)
「ESCAPE」(2014)

──興味深いです。それと、わかさんの絵を見ていて、画材の使い方やタッチに開放感があるところも魅力だと感じます。でも、それは恐いことでもありますよね。ここで終わって良いのだろうか…という。そういった葛藤はありますか?

わか 結構、毎回ありますね。にじみを残すべきかとか、上から重ねてやめておけば良かったとか。後悔も多いです。でも、それとは別で、あまり深く考えず、思いきり好きに描く絵もあって。年賀状用に描いた「自由画」絵は気楽に描いたんですけど、これは割り切って、思い切り好きなように描こうと思いました。何を描こうというモチーフと勢いだけで描き進めていて。子供の落書きみたいなものができました。

「自由画」(2012)
「自由画」(2012)

──なるほど。わかさんが絵を描くときに意識的に自分に課しているものはあるのでしょうか? 例えば、あまり媚びずに描こうとか。

わか 個展や「AQ」というイラスト本の場合は、自分が一番描きたいもの、描いていて落ち着く「素」を描きました。見る人がたぶん引くと思うけど、好きな人が好きと言ってくれたり、なんとなーく共感してくれたらいいだろうなという気持ちで描いてます。カラフルな絵や合作、ライブペイントは、楽しい気持ちのときに描いたり作っていて。やりたい時期がそれぞれ違うんです。

「AQ」(2014)
「AQ」(2014)

──そうなんですね。自分の素の部分を絵にするというのは、もともと意識していたことでしょうか?

わか いや、全然できなかったです。昔は少女漫画ばかり読んでいたこともあって、投稿した初期の絵はカラフルで、楽しさとか可愛さを中心に描いてました。綺麗に描きたい、不思議なモチーフを入れてごちゃっとさせたい、ファンタスティックな世界を描きたいなとか、そんな時期だったんです。なので、当時は絵で自分の本音を絵で出そうとは思っていませんでした。それと、イベントに出はじめたこともあり、人の目がある意味気になっていたなとも思います。

──それからどのように変化したのでしょう?

わか 可愛いものを描きたいという気持ちが大きかったので、自然とカラフルが多かったんです。千足さんと二人展をした時期、描く方向を意識的に変えようと思っていました。カラフルな絵は楽しかったのですが、たまに「このままで良いのかな」とか「自分が一番描きたいものは違う気がする」と感じはじめて。じゃあ、人の目を気にしないでもっと暗い絵も描こうと思い、自分らしい絵ってなんだろうとか、素直な気持ちってなんだろうと考えるようになりました。

──なるほど。色やテーマが変わってきても、絵の中に不思議ないきものがポツンと描かれているところが、ほんの少し絵の中に隙を残しておくように感じました。絵を見る人が作品の世界に入るきっかけになるような。そういうバランスが絶妙だなと思います。

わか 最近は描く量が減ってきましたけれど、色んなモチーフを使った絵のときは、ここが空いているから入れてみようと足しています。すごく深い意味はないのですが、楽しいのと遊び心です。あとは、少しでもマイルドになるかなとも思っています。

SS24号描きおろしイラスト(2010)
SS24号描きおろしイラスト(2010)

──私が個人的に去年開催した個展で印象に残っているのは、「抑圧」「同一化」「分裂」など言葉を形にしたシリーズ作品です。テーマを決めて18枚を連作しているというのも新鮮でした。

わか 「defence mechanism」ですね。心理学用語から想像したイメージを紙に落とし込みました。

──ずっと気になるモチーフだったのでしょうか?

「defence mechanism」(2015)
「defence mechanism」(2015)

わか そうですね。大学生のとき、心理学専攻というわけではないのですが、ときおり心理学の授業があったんです。色んな用語が出てきて、ずっと気になっていました。でも、なかなか描く機会がなくて、自分が素で描けるようになってきてから、絵にしようと思ったんです。

──大学生の頃から気になっていたのですか。そうすると、気持ちとしては最初に画集を作った頃でしょうか?

わか そうですね。そのときは心理学をモチーフにしたり暗い絵を描こうとする気持ちが、まだなかったんです。絵とは切り離して気になっていました。

──気になるモチーフや感情と絵が繋がったんですね。わかさんの中で、自分の気になっていることが絵に上手く出せたなと思う作品を教えてください。

わか そうですね…思い切り自分のホンネや気になっているものをバッと出した絵は「AQ」「ESCAPE」「箱に閉じこもる君に告ぐ」「多重面相」「クロール」でしょうか。

「クロール」(2013)
「クロール」(2013)
「箱に閉じこもる君に告ぐ」(2013)
「ク箱に閉じこもる君に告ぐ」(2013)
「多重面相」(2013)
「多重面相」(2013)

──青い色をメインにした作品が多いですね。色選びにも繋がっていますか?

わか カラフルな絵は自分の気持ちを描いてはいないので…絵を見返すと2012年くらいから少しずつ青系が増えていますね。例えばSS29号でイキングした絵は、自分の気持ちではないですが、憂鬱な気持ちの女の子を描いていて、その子の気持ちを想像したとき、水色や青が良いかなと思ったので、青系の絵になりました。

──描いている気持ちにあった色だったんですね。また、最近は実景が登場する作品も描かれていますね。

「誰もいないところへ」(2016)
「誰もいないところへ」(2016)

わか 昔は背景が描けなくて、入れたい意識もなかったので描いてませんでしたが、個展以降はそういう絵も描きたいと思うようになりました。実際に行って自分で撮影した写真を元に描いています。例えば、「誰もいないところへ」は、この場所の寂しげな雰囲気が気になって、描いてみたくなりました。ちょっと剥がれたチラシもありました。絵にするときは、そのまま描くのではなくて、チラシの中身は絵に合わせて変えるなど、自分の勝手なイメージに差し替えたり描き加えています。

──また新たな世界を見られて嬉しいです。これから描きたいもの、活動について教えてください。

わか 描きたい写真があるので、背景のある絵は続けていきます。あとは、絵の幅としてモノクロの絵や人物が主体の絵が少ない事がネックであるので、練習も兼ねて描こうかなと思っています。展示はときどき参加しつつ、個展はすぐにできませんが、たくさん描き溜めてまたやりたいです。その前に、なにか絵のお仕事をしてみたいですね。書籍とかCDジャケット、メイキングでもなんでも。

──とても楽しみです。お話いただきありがとうございました!


 

わか

イラストレーター。主に展覧会、デザインフェスタやコミティアなどのイベント、WEBで作品を発表している。
今年参加した主な展示・イベントに「うみ展」(ぎゃらりーあーとぺーじ唯心)、「あお展」(ARTs*LABo)、横浜ハンドメイドマルシェがある。
現在おやすみしている絵の仕事は、2017年4月以降から受け付けるとのこと。

これからの参加イベント
11月26日・27日開催【デザインフェスタ44
2017年2月12日【コミティア119
来年はグループ展も予定している。
 
HP http://mixmelts.tumblr.com/
pixiv ID 25587
twitter @wimkmiw

【デザインフェスタのブースの様子】
デザイン・フェスタのブースの様子共同制作した巨大ライブペインティングイラスト
デザインフェスタのブースの様子(左)と、過去のデザインフェスタで共同制作した巨大ライブペインティングイラスト。今年11月開催のデザイン・フェスタでも、この巨大なライブペインティングを行う予定とのこと。